ビジネス環境の変化も技術革新が著しいことから、5年先を予想することさえ困難であることはいうまでもない。一方で、抜本的な業務改革やITインフラの構造改革は一大プロジェクトであり、長期的な視点を持って臨まなければならない。本稿では、長期的なIT計画を立案する際に用いる仮説立案と課題抽出の手法を紹介する。
昨今、ユーザー企業の間で長期的なIT計画を策定しようとする動きが活発化しており、それは大きく3つの背景に起因していると考えられる。1つは、リーマンショック以降長く続いた景気後退から一定の回復を見せ、IT投資も復調の兆しが見られることである。コスト抑制により長らく先送りにしてきたITインフラの構造改革や大規模な業務システム刷新に、そろそろ本腰を入れなくてはならないという意識が高まっている。
2つ目の背景は、今がまさにテクノロジの変曲点であるということである。クラウド、モバイル、IoT(Internet of Things)といったデジタルイノベーションの潮流は、1990年前半に経験したオープン化およびクライアント/サーバ・コンピューティングへのシフトに匹敵する、あるいはそれ以上の影響を企業ITに及ぼそうとしている。これまでの考え方の延長線上では、将来のビジネスを支えることは困難であるとの認識の表れといえる。
そして、無視できない3つ目の背景は、ITスタッフの高齢化問題である。2007年問題から5年が経過し、雇用延長した団塊の世代が65歳を迎え、会社から引退する人材が増加する2012年問題が顕在化し、技術・ノウハウ伝承に関わる問題が待ったなしの状況となってきている。こうした問題を抱える企業では、企業ITの将来像を描き、長期IT計画の策定をIT部門の「式年遷宮」と位置づけ、ベテランの知見やノウハウをそこに組み込みたいと考えている。
ITRがこのところ、「IT都市計画」を重要視して取り上げているのは、これらの背景を踏まえてのことといえる。