システム運用・保守は、システム開発の後工程という位置づけであり、IT部門では必要悪のように捉えられているネガティブな一面がある。しかし、経営層や事業部門からITのビジネスへの直接的な貢献が求められている今、システム運用・保守から得られる情報や知見を能動的に活用するという側面から再考することが求められる。
システム運用の位置づけを見直す時期に来ているかもしれない。これまで、システム運用はシステム開発が終了して、移行された後のシステムのお守りといった位置づけと見なされてきた。一方、近年、ビジネス環境が著しく変化する中、ITのビジネスへの貢献が期待されているが、これを実現できているといえる企業は必ずしも多いとはいえない。このような状況の中で、情報処理推進機構(IPA)技術本部ソフトウェア高信頼化センター(SEC)では、システム運用・保守を見据えたシステム企画・開発という視点を追加して、6年ぶりに改訂した「共通フレーム2013」を発行している。本稿では、同フレームワークで強調されているシステム運用の見直しについて取り上げ、その価値を再考する。
「共通フレーム」とは、システム開発やシステムサービスを取引する当事者が「同じ言葉」を話せるように共通の枠組みを提供し、システムの企画から要件定義、開発、運用、保守、廃棄に至るまでのシステムライフサイクル全般にわたって必要な作業内容を体系的に規定したガイドラインである。前身の「共通フレーム2007」では、情報システムをIT部門やベンダー任せにせず、経営者や事業部門が積極的にかかわる必要があるとの考えから、「超上流」という考え方が取り入れられた。
今回の「共通フレーム2013」は、国際規格ISO/IEC12207が2008年に改訂され、国内のJIS規格(JIS X 0160)が2012年に改訂されたことを受けて改訂されたものである。この改訂で注目される点は、これまでシステム開発の後工程としてシステム運用が捉えられてきたが、本来業務システムは、業務で利用されて初めて価値を生むものであることを改めて認識し、業務改革や業務改善を促すきっかけとしてシステム運用を捉えることが重要である、としている点である。