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【R-214081_6962993500】オープンソース再考(後編)

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Oct 2, 2023 4:36:07 AM

HadoopやOpenStackのように、現在のOSSの多くは商用ソフトウェアの機能限定版や廉価版ではなく、先進的機能を創出する戦略的ツールとなっている。国内ユーザー企業は、これまでOSSに対して語られてきた数々の「常識」に惑わされることなく、自社ビジネスにOSSを積極的に活用するためには何をすべきなのかを真剣に検討する必要がある。

OSS初期コスト肥大化懸念の背景

前編では、国内ユーザー企業のIT部門はオープンソースソフトウェア(OSS)に対し初期コストの削減効果を期待しているが、実際にOSSを使用する際には初期コストが過大になることを危惧しているとの調査結果を示した。また、自社におけるOSSの重要度は低く、OSSの適用領域はサーバOSおよび一部のミドルウェアにとどまっていることも明らかとなった。後編では、国内ユーザー企業のIT部門がOSSに期待すべき効果を明らかにし、望まれるOSSへの取り組みアプローチについて述べる。

2009年12月に発行したITR Review「主役に躍り出たオープンソース・ソフトウェア」(#R-209124)では、ソフトウェア・ライセンスに対する投資を、サポートおよびより高い専門性のある開発者やアーキテクトへの投資に変更し、企業ITのROIを最大化するために何をすればよいのか考えるべきであると述べた。具体的なアプローチのひとつとして、広範囲に展開され、ユーザー単位もしくはプロセッサ単位の年間サポートコストが高額なソフトウェアを探して、OSSによる代替を検討する手法が有効である、とも言及した。この時にこのようなOSSに対する前向きな取り組みを開始した企業は、5年経過後の現在では種々のビジネス成果をあげていると考えられる。しかし残念ながら、このような取り組みを行った、言い換えれば、OSSに長けた開発者やアーキテクチャの育成を行ったIT部門は結果として極めて少数であった。

OSSへの取り組みが遅れた代償として、いまOSSを導入しようとすれば、ほとんどのIT部門では、適切なOSSの選定や技術的サポートに外部企業の支援を要することになる。このような背景により、OSSの初期コストが肥大化することに懸念を抱いている企業が多いのである。