プライベートクラウドを構築し、複数のパブリッククラウド(IaaS)も併用するユーザー企業が増えている。クラウドにおける運用コストの削減、迅速なシステム立ち上げ、アプリケーションのポータビリティ確立など、高度なクラウド・オペレーションを実現するために、ハイブリッドクラウドの構築を目指すべきである。
パブリッククラウド(ここではIaaSの意味)が登場し、その後、この新しいコンピューティング・パラダイムをオンプレミス環境に適用したプライベートクラウドが定着した。今でも、企業にとってパブリッククラウドとプライベートクラウドのどちらが優れているのか、といった議論が盛んになされている。しかし、今後、どちらか一方のクラウド形態に収斂していく可能性はあるのだろうか。
従業員1,000名以上の国内大規模企業に対して実施したクラウド利用動向調査において、「プライベートクラウド」を「導入しており、今後も拡張する」と回答した企業の「パブリッククラウド」の利用状況を図1に示した。プライベートクラウドに注力している企業の多くが、パブリッククラウドも利用しているかその予定であることがわかる。つまり、多くの国内ユーザー企業は、パブリッククラウドとプライベートクラウドを併用する「ハイブリッドクラウド」を指向しているといえる。
特に大企業においては、長年利用し続けているアーキテクチャの古いシステム(クライアントサーバ型システムなど)が多く存在し、パブリッククラウドでの稼働保証がないパッケージ・ソフトウェアを利用することも多い。パブリッククラウドに片寄せするためには、多くの年月と莫大な費用が必要となる可能性が高い。また、すべてをプライベートクラウドで運用したい大企業は少なくないが、スマートフォン/タブレットへの迅速な対応、利用負荷の事前予測が困難な新規システム、迅速なグローバル展開が必要なビジネスシステムなど、経営者や事業部門がパブリッククラウドの活用を期待するシステムも多く、パブリッククラウドを全く利用しないでいるのは困難な時代になっている。