1990年代後半に市場に投入されたインメモリ・データベースであるが、SAP社がHANAによって主張したインメモリ・データベースによる処理高速化の利点は、既存のデータベース・ベンダーに多くの影響を与えた。2014年には、RDBMSの主要ベンダーであるIBM社、Microsoft社、Oracle社からインメモリ機能を強化した製品が出揃うことで、競争の激化と本格的な利用が開始されることになる。本稿ではインメモリ・データベースに対するユーザー調査の結果をベースにこれからの市場動向を述べる。
これまでもRDBMSはデータ処理性能を向上させるために、インデックス機能、並列処理、クラスタ対応、データ圧縮、カラムストアなどさまざまな機能拡張を続けてきたが、最近話題となっているのはインメモリ処理である。データベースにおけるインメモリ処理の概念は決して新しいものではなく、1980年代後半にはその可能性が指摘され、1996年に創設され、その後2005年にOracle社に買収されたTimesTen社や1992年にスウェーデンに創設され、その後2007年にIBM社に買収されたSolid Information Technology社、また国内でも高速屋、数理技研、ターボラボラトリーなどから製品が提供されている。しかし、従来のインメモリ・データベースは、多くの企業が利用している一般的なRDBMS製品とは別製品として、少量のデータを高速処理するための特殊な製品やRDBMS製品を補完するデータキャッシュ的な製品として位置づけられていた。しかし、2010年にSAP社がHANAをリリースしたことによって再び注目を集め、2013年にはIBM社がDB2 V10.5 BLUの出荷を開始し、Microsoft社は2014年出荷予定のSQL Server 2014でインメモリ機能を強化することを発表し、Oracle社も2014年にOracleDatabase 12cにインメモリ機能をオプションとして追加すると正式発表している。
2014年には主要データベース各社のインメモリ・データベースが出揃うことで、インメモリ機能を有しているか否かから、どのベンダーのインメモリが優れているかを問う、本格的なインメモリ・データベースによる競争が開始されるであろう。現在、RDBMSでの処理性能に問題を抱えている企業にとって、現実的な課題解決のための選択肢となり得る状況となる。そこでITRでは、インメモリ・データベースに関する国内市場の現状を明らかにすべく2013年11月にユーザー調査を実施し、200件の回答を得た。