クラウドがITにおける選択肢として定着してきているが、基幹系業務システムにおいてもSaaSの伸び率は高く、新たな業務分野に拡大する傾向が見られる。また、グローバルビジネスの伸展に伴い、国内から海外にシステムを展開する用途での利用も伸びてきている。基幹系業務システムにおける注目すべき動向として、SaaSとグローバル化への対応状況、およびその見通しについて述べる。
ITRでは、2013年2月から4月にかけて、ERPの国内49社のソフトウェア・ベンダーの製品を調査し、その動向を「ITR Market View:ERP市場2013」として発刊している。その結果、2010年度から2012年度にかけて微増が続くパッケージ市場に対して、SaaS市場は二桁増の伸びを継続していることが確認された。ERPパッケージ市場の2012年度の出荷金額が790億円程度であるのに対して、SaaS型ERP市場は65億円程度となる見込みで、まだ10分の1以下の市場規模ではあるものの、2011年度から2012年度にかけては21.2%増の成長を遂げる勢いである(図1①)。
「基幹系業務システムにおけるSaaS/クラウド(ITR Review 2010年4月号 #R-210041)」で述べた2009年の調査結果に比べて、SaaSの出荷金額が40億円程度減少しているのは、クロスヴィジョンインターナショナル、ペイロールといったベンダーの人事給与分野のアウトソーシングサービス売上げを除外するなど、対象サービスや業務分野の見直しを行ったことによる。今後は、1年ないし数年間といった契約期間に拘束のあるサービスはSaaSから除外し、月額のサブスクリプション契約のサービスのみを対象として調査を実施する方針である。