情報システムの全体最適化、開発保守業務の効率化、グループ/グローバルを視野に入れたITガバナンスなどを推進するうえで標準化は重要なキーワードである。ITに関する標準化には、開発や運用などに関するプロセスの標準化と、要素技術やデバイスなどに関する技術の標準化があるが、本稿では技術の標準化の意義と推進体制について述べる。
本稿で述べる技術標準化は、社内またはグループ内で採用するIT関連製品や要素技術について、統一もしくは選択肢を限定することを意味する。1990年代にオープンシステムが台頭し、技術の選択肢が広がったことで、システムごと、プロジェクトごとにバラバラな技術の採用が進んだ。また、矢継ぎ早に新技術が台頭するため、システム構築の時期によって旧式の技術と最新の技術が混在することも多くなった。その結果、システム全体という視点では構造が複雑化し、TCOを増大させたことから技術標準化の重要性が認識されるようになった。
標準化の対象は、サーバ、ストレージ、ネットワークなどのハードウェア、サーバOS、開発言語や開発フレームワーク、DBMS、運用管理ツールなどの基本ソフトやミドルウェア、会計、人事、グループウェアなどのアプリケーション、パソコン、タブレット端末、クライアントOS、オフィススイート、ブラウザ、アンチウィルスソフトといったエンドユーザー環境にいたるまで非常に多岐にわたる。昨今では、クラウドサービスやモバイル・アプリケーションも重要な対象となりうる。単一の製品・技術に統一するという厳密な統制を伴う標準化もあれば、いくつかの推奨製品・技術を利用可能とする緩やかな標準化もある。標準化の推進にあたって、IT部門が単独で遂行できる分野もあれば、情報システム子会社や外部ベンダーを巻き込まなければならない分野、さらにエンドユーザーに大きな影響が及ぶ分野もある。
また、標準化の対象となる各製品・技術には、アップグレード、リース切れ、資産償却、技術の陳腐化、サポート切れなど、更新のタイミングが必ずあり、そのタイミングを逃すと、また何年も待たなければならなくなるため、長期的な視点での計画と推進が必要となる。