ITR Review 2013年3月号に掲載した前編では、Microsoft社のテクノロジを中心に据えていないユーザー企業はJavaをシステム開発言語の自社標準と位置づけるべきであり、同時にJavaフレームワークの自社標準も選定すべきであると説いた。IT部門は、イニシアチブを持ってJavaフレームワークの自社標準を決定すべきであり、Javaコミュニティによって開発/標準化が推進されるJava EEを中心に検討すべきである。
Javaフレームワークの選定方針を検討する場合、Javaの標準化がオープン・コミュニティによって推進されていることを知ることが非常に重要である。Javaの仕様、バージョン、機能およびAPIは、Java Community Process(JCP)と呼ばれる標準化プロセスによって策定/開発される。誰でもJCPのメンバーになることができ、Javaユーザーグループ会員であれば、参加費は無料である。Javaの標準規格(仕様およびバージョン)の提案をJava Specification Request(JSR)と呼び、スペックリード(SL)と呼ばれる責任者の下に集まったエキスパートグループ(EG)のメンバーによってJSRが作成される。JCPメンバーであれば誰でもSLになれ、どのEGに属すかも自由である。JSRは、エグゼクティブコミッティ(EC)と呼ばれるJCPにおける承認組織に提案され、ECメンバーの投票により承認/否決される。当初、ECは、Java ME(Java Platform, Micro Edition:組み込み用途のJavaエディション)担当と、Java SE(Java Platform, Standard Edition:初期のJDKに相当)およびEE(Java Platform, Enterprise Edition)担当の2つに分かれていたが、2012年11月13日より有効となったJCP 2.9以降は1つの組織に統合された。JCP 2.9ではECは24名のメンバーから構成されている(図1)。
各ECにOracle社は1常任席を有し、残る15席のうち10席はOracle社推挙によるメンバーであることから、JSRの策定にはOracle社の意向が反映されることは否めないが、EGにおける作業、JSR提案内容、ECによる検討など全てのJCPのプロセスはオープンであることが求められているため、Oracle社単独の意向が反映しやすい組織/プロセスとはなっていない。技術と意欲さえあれば誰でもJavaの標準化に貢献することができるともいえる。オープンソース・ソフトウェア(OSS)がコミュニティによって開発・標準化されているのと極めて似たプロセスといえよう。