企業は、長年にわたりIT投資を続けてきたことで、IT予算の多くを運用コストが占める現状と向き合う必要に迫られている。運用コストを節減するにはどのような施策を検討すべきか、そして、経済合理性の高いコスト節減計画をいかに導くべきかについて考察する。
IT予算に占める運用コストの肥大化が、多くの企業で問題視されている。これは、ここ十数年のあいだに、IT支出が投資モードから徐々に維持モードに切り替わってきた点が背景にある。ITRが実施する「IT投資動向調査」では、2001年度に1.3%であったIT予算比率の平均値は、2012年には3.0%に増加しており、IT予算に占める定常費用比率は38%から62%に拡大している。断続的に新規構築したシステムの運用コストが積み上がり、定常費用がIT予算を圧迫している。これが、企業のIT予算推移において往々にして観察される現状である。
問題は、投資モードが落ち着き、大型のIT投資が一巡した現在、支出する定常費用が妥当といえるかどうかであるが、多くの企業では、自社ITの定常費用は必要以上に膨らんでおり、改善余地があると見ている。例えば、コンピューティング資源、オペレーション、保守、ITマネジメントといった領域が十分にコスト抑制されていると考えるIT部門は少数派であろう。そのため、運用コストの節約や削減は、多くの企業において重要課題となっている。