IT運用におけるAI活用への期待が急速に高まっている。AIOpsは観測・検知領域で一定の成果をあげてきたが、運用プロセスの未標準化やナレッジ不足を背景に、判断から実行までの自動化には依然として課題が残る。こうしたなか、生成AIに続きAIエージェントが登場し、状況の診断から対処、復旧までを自律的に遂行する新たな運用モデルが注目されている。本稿では、IT運用におけるAI活用の現在地と課題を整理し、AIエージェントがもたらす運用の進化を考察するとともに、自律型運用の実現に向けたIT運用基盤の方向性を示す。
企業のIT運用を取り巻く環境は、大きな転換点を迎えている。クラウドの活用が当たり前となった今、管理対象となるシステムやアプリケーションは増加し、その種類も多様化している。オンプレミス中心の時代に構築された運用管理の仕組みや体制では、その複雑性に追いつけなくなってきているのが実情である。そうした状況のなかで、企業はIT運用においていま何に注力しようとしているのだろうか。
ITRが、従業員数100名以上かつ年商10億円以上の国内企業のIT運用管理者に対して実施した『IT運用管理の実態調査2025』の中から、IT運用管理において企業が優先的に取り組むテーマに関する調査結果を見てみよう。2025年調査で最も多かったのが「AIによる運用の高度化/自律化」であり、前年調査から大幅な上昇をみせた。スクリプトやルールベースの自動化は、現在も有効な手段であるが、それのみでは、動的に変化するクラウド環境や予測困難な障害パターンへの対応に限界がある。そのため、AIを活用して運用そのものを高度化・自律化しようという機運が、企業の間で急速に高まっている。
この急激な関心の高まりを牽引しているのが、生成AIおよびAIエージェントの登場である。従来の運用自動化が「あらかじめ決められた運用手順を実行する」ものであったのに対し、AIが「自らの分析と判断に基づいて運用を実行する」ものへと進化しつつある今、自律運用への期待が高まっている。