近年、DXの進展により、業務やサービスのIT依存度がますます高まっている。そのような中、予期せぬ障害によるシステム停止は依然として多く、ビジネスに与える影響が深刻化している。また、システム障害の原因が多様化・複雑化していることで、障害の検知から復旧までの対応が遅れ、さらに影響が大きくなる例も少なくない。このような背景の下、企業のIT戦略においては、障害からの迅速な復旧を実現するシステムのレジリエンスに対する重要性が高まっている。本稿では、システムのレジリエンス強化に向けたプロセスを解説し、迅速に復旧するためのアプローチを考察する。
現代のビジネス環境において、システムの予期せぬダウンタイム(システムやサービスが停止し利用できない時間)がもたらす影響は、単なる業務やサービスの停止にとどまらず、ビジネス機会の喪失や、顧客/取引先/株主といったステークホルダーからの信頼低下を招く。さらに、場合によっては社会問題へと発展し、企業のブランドイメージに深刻な影響を及ぼすこともある。特に、事業運営に直結する重要なシステムの停止は、決して許されない事態である。
加えて、近年はDXの進展により、企業活動のあらゆる領域でシステム依存度が高まっている。新しいデジタルサービスやデータ活用が競争力の源泉となる一方で、その基盤となるシステムの安定性が損なわれれば、企業全体の成長戦略が根本から揺らぎかねない。
しかし現状では、多くの企業においてシステム障害が発生している。ITRが実施した『システム運用管理実態調査2024』によれば、全体の半数以上の企業が過去1年間に業務やサービス停止を伴うシステム障害を経験している(図1)。業種別に見ると、製造、情報通信、建設・不動産においてはその発生率は約6割にも上っている。システム障害の発生リスクは、ますます高まっているとみられる。