ローコード/ノーコード開発ツールの成熟度向上に伴い、「市民開発」に前向きな国内企業が増加している。「市民開発」は英語の「Citizen Development」の直訳に相当するが、企業メンバーを「市民」と位置づける意味はどこにあるのだろうか。また、従来の開発手法と比べて、「市民開発」はどのようなメリットとリスクがあるのだろうか。自社における「市民開発」を制約や規制なく認可する企業は少なく、多くは何らかのガバナンスが必要と考えている。「市民開発」と「ガバナンス」という一見矛盾した思想にバランスの取れた解は存在するのだろうか。本稿では、市民開発がもつ真の価値とその推進手法について提言を行う。
IT系メディアにおいて“市民開発”という言葉がよく使われている。英語の「Citizen Development」の直訳に相当する言葉であるが、日本では「市民開発」に対する定義は確立していない。ITRによる「市民開発」の定義を図1に示した。市民開発における「市民」とは「非IT専門家」を意味し、これらの3つの条件を満たす必要がある。