昨今、企業は前例のない複雑で変化の激しい経営環境に直面している。技術トレンドを的確に捉え、持続的に企業価値を向上させるための「戦略」がますます重要となっている。こうしたテクノロジ変遷期において、持続可能な成長を実現するには、企業はどのようにビジネス戦略を描き、推進すればよいのだろうか。
「今日の企業はどのような経営環境に置かれているのだろうか」そう問いかけると、多くのビジネスパーソンはVUCAを想像するであろう。20世紀までの比較的安定した時代を経て、2000年代からはVUCAの時代に入った。従来型の管理、戦略、手法が機能しない「不確実性」が支配する時代であったといえる。
しかし、すでにVUCAは終焉し、時代は新たなステージに突入している。未来学者のJamais Cascio氏は、現在はBANIの時代と位置づけている。BANIとは、Brittle、Anxious、Nonlinear、Incomprehensibleの頭文字であり、順に脆弱、不安、非線形、不可解を意味し、これまでにも増して経営環境が不透明で、変化の予測が困難なカオスな状況を指す。これからの企業経営においては、想定外の変化への適応力とレジリエンス(復元力)を備えることが重要課題となる(図1)。