改正個人情報保護法が2022年4月に施行され、企業はパーソナルデータの取り扱いに一層厳しい対応が求められている。本稿では、デジタルマーケティングを取り巻く環境の変化に対応するための指針を示すとともに、テクノロジの活用によって安全かつ効率的なパーソナルデータの活用を実現する手法について考察する。
デジタルテクノロジの波は社会全体に押し寄せており、企業のさまざまな業務プロセスはデジタル化を前提とした変革が進められている。マーケティングの領域も例外ではなく、企業は顧客の獲得と売上げ増大のために、デジタル上で熾烈な競争を繰り広げている。
デジタルマーケティングは、インターネットへの接続デバイスの普及と密接な関係にある。そして、現在その接続の入り口として最も利用者の多いスマートフォンの普及率は増加の一途をたどり、総務省『情報通信白書 令和4年版』によると、2021年の国内世帯普及率は9割に迫る状況となっている。スマートフォンの普及は、デジタルマーケティングにおける顧客との接点構築の重要な転換点となった。スマートフォン以前のインターネット接続デバイスの主流はPCであり、主にデスクに設置した状態で利用されていた。しかし、小型で可搬性の高いスマートフォンの普及によって、移動中など、これまでインターネットアクセスを想定していなかったシーンでの接点構築が可能となった。そして、その普及をさらに後押ししたのがSNS利用者数の増加である。コミュニケーションツールとして普及したSNSは、利用者自身の総合的な情報ポータルに成長した。SNSアカウントをコミュニケーションと情報探索のためのポータルとして利用することで、、SNSはニュースやECなど各種チャネルにアクセスする経路にもなっている。そして、その導線上にはさまざまな広告が配置され、利用者はサービス享受の対価として、広告視聴を強制されているのが実情である。