コロナ禍の長期化を受けて、国内企業の間でもオフィス勤務への回帰が進んでいるが、そうしたなかで、オフィスワーク、リモートワークそれぞれの利点を組み合わせる「ハイブリッドワーク」を指向する組織も少なくない。本稿では、ハイブリッドワークの特徴を整理するとともに、その実現に向けたポイントを解説する。
コロナ禍が本格化した2020年春以降、国内企業の働き方は大きく変貌を遂げた。感染対策のためにオフィス出勤や対面による他者との接触が制限されたことにより、多くの働き手が在宅勤務を経験した。ITRが毎年7月に行っている大規模なアンケート調査によれば、コロナ禍以前は10%台で推移していた在宅勤務制度の導入企業の割合が、2020年には50%超と急拡大を遂げた。
こうした大転換は、制度/ツールの未整備、就業管理のしにくさ、オフィスを前提とした慣例的な組織文化など、かつてリモートワークの阻害要因と考えられていた要素を乗り越える機会となったが、あくまでもパンデミック対策を第1の目的とした強制的な措置であったことも事実である。企業によっては大規模な在宅勤務によるコミュニケーション不全や、組織への帰属意識の減退などの問題が表面化した。また、マネージャーが部下の仕事ぶりを把握しにくい、デジタル機器やツールに不慣れな社員が成果を出しにくい、といった課題に悩むケースも見られた。
では、コロナ禍後を見据えたとき、再び以前のようなオフィスワークに完全に戻すのが最適かといえば、それを是とする意見は少数であろう。ITRが2021年8月に実施した調査では、首都圏で勤務する企業のIT管理者のうち、コロナ禍後も在宅勤務を継続すると予想する割合は実に70%を超えている。
企業の経営者には、リモートワーク、オフィスワークそれぞれの課題に対応できる新時代の働き方を追求するという難しい課題が突きつけられている。