自動車産業は、長期的視野から自動運転技術やサービス化を伴う新たなフォーマットの産業へシフトしていくことが予想される。現在、コロナ禍の影響を強く受けている同業界だが、パンデミック収束後はどのような展開が見込まれるだろうか。本稿では、国内市場に焦点をあてモビリティサービスの将来像について考察する。
自動車産業が100年に一度の大変革期を迎えているといわれて久しい。革新的技術の実用化や社会的ニーズに応じて、求められる自動車のコンセプトは変容してきた。昨今は、自動運転の開発が進み、EV(Electric Vehicle:電気自動車)へのシフトが顕著である。2030年に世界で販売される新車の6台に1台が自動運転車になり(Frost&Sullivan社)、2040年には世界販売シェアの過半数がEVになると予想されている(Bloomberg社)。温室効果ガスの抑制をもたらすゼロエミッション車への世界的な関心も高まっている。EVはその本流であり、ガソリン車はもとよりハイブリッド車(HV:Hybrid Vehicle)やプラグインハイブリッド車(PHV:Plug-in Hybrid Vehicle)からの世代交代を見据えた車両開発が進んでいるのが現状である。
モビリティ(移動)のオンデマンド化も自動車産業における大きな変革テーマである。Uberをはじめとする新たなモビリティサービスの世界的な普及は、自動車の購買需要に影響を及ぼしている。特に都心部では、渋滞や駐車場不足が招く環境負荷や事故によって社会が負担すべきコストが上昇する点が問題視されており、自動車数の増加を抑制する社会的プレッシャーもある。そして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、これらの状況はさらに新たな局面を迎えようとしている