昨今関心が高まるAI技術は、エンタープライズシステムの分野でも急速に普及してきており、コモディティ化が著しく進展している。主要ベンダーは、自社のあらゆる製品・サービスにAI技術を組み込みつつ、高度化・高付加価値化を推進していくと見られる。企業はどのようにAIをエンタープライズシステム領域で活用でき、どのように取り組んでいくべきかについての検討を進めることが求められる。
はじめに、エンタープライズシステム分野では、どのような領域でAI技術の活用が進展しているか確認してみよう。
あらゆるシステムのフロントエンドに、操作や作業の自動化、および意思決定支援を行うデジタルアシスタント機能が組み込まれ、ユーザー・エクスペリエンスの向上が図られてきている。末尾にTechを付与するキーワードもFinTech以降増えており、これらは従来のシステムに対して、手作業などをデジタル化する付加価値やAI技術活用による先進性で差別化を訴求している。CostTechは、まだあまり認知されていないが、製造原価分野での取り組みが先行している。この技術は、IoTで製造物・製造工程をモニタリングして実績としての製造原価を迅速に把握するだけでなく、製品の形状・寸法・角度などのジオメトリをAIの画像認識技術で測定することで、生産性向上や不良品の削減を設計にまでフィードバックする、いわばデジタルツインの一種である。
ダイナミックプライシングは、顧客ごと、利用タイミング別の需給バランスで価格を変動させ利益最適化を図るシステムであるが、デジタルデバイスの低廉化やビッグデータ処理のAI技術普及で、その利用シーンが広がってきている。
ロジスティクス4.0は、インダストリー4.0のサブセットのような位置づけであるが、物流は、倉庫内作業者、運転手などによる改善活動や判断に依存した効率化が限界に達しており、自動化、標準化、デジタル化に向けた抜本的な改革に迫られている。そして、自動化や最適化を図るより大きな枠組みが、CPS(Cyber Phisical System:サイバーフィジカルシステム)とオートノミクスである。