省庁主導のオープンイノベーションやFinTech企業の台頭により金融サービスのデジタル化が加速度を増している。金融業の枠を超えた新サービスの展開も期待され、その潮流はあらゆる業種のビジネスに変化をもたらすだろう。本稿では、業界の動向を紐解きながら、ユーザー企業が近未来の金融サービスにどう対峙し、活用すべきかを論じる。
新たな金融サービスが勃興している。金融機関の出資による新会社の設立やFinTech企業の台頭など、金融業界におけるプレーヤーの増加が著しい。デジタル化の波を受けて、金融サービス市場は稀に見る変化の時勢にある。その将来動向は、デジタル化によりサービスモデルの変革を迫られる企業であれば、業種を問わず押さえておきたい関心事である。
そこで、デジタル化が顕著である金融サービスを俯瞰して理解するために、デジタル化の目的と活動主体から4つの類型に整理した。
デジタル化による効果は、既存業務に進化をもたらすものと新規ビジネスの創出を狙うものがある。金融サービスのデジタル化の活動主体は、既存の金融機関とFinTech企業がある。
①改善型:金融機関がデジタル化により既存業務を進化させる類型である。業務の効率化・省力化の効果があり、昨今の金融サービスにおいて、最もIT投資が盛んな領域といえる。
②参入型:非金融機関であるFinTech企業が、金融業界周辺業務をデジタル化によりビジネスとする領域。利用者の利便性を向上させるサービスが多く、ベンチャー企業の進出が目立つ。
③変革型:金融機関がデジタルイノベーションによりこれまでになかった新しいビジネスモデルの創出を狙う領域。社内で専門部隊を組成する、外部のリソースを活用すべく他社と協業するなど体制はさまざまである。
④創造型:FinTech企業が主体となり、新たなビジネスモデルを創出する領域。金融機関・非金融機関・利用者といった立場の異なる複数の関係者をつなぎ、付加価値を提供するサービスが想定される。