金融業界は現在、急速にデジタル化が進んでおり、フィンテックと呼ばれる新技術が世界の新潮流となろうとしている。フィンテックに関する動向や今後の展望をまとめるとともに、暗号通貨技術をもとにした新規事業の創造についても考察する。
「フィンテック」とはFinanceとTechnologyを掛け合わせた米国発の造語である。一般的にはスマートフォンやタブレットなどを使い、どこからでも簡単にアクセスすることができる金融サービスや、人工知能、ビッグデータ、IoTなどの最新技術を活用したベンチャー企業が提供するサービスを指す。ただし「フィンテック」という言葉は、バズワードの要素を含んでおり、明確な定義がないため多くの人々が一意に認識することができず、フィンテックに該当するサービスかどうかの判断は曖昧な状況である。つまり、フィンテックはメディアなどを通じて社会に浸透している途中であり、徐々に専門用語として確立していく段階だといえる。
一方、フィンテックは決して真新しい概念ではなく、既存の金融システムそのものであるともいえる。従来からフィンテックに相当する機能は存在しており、金融工学に代表されるような、数理計算やリスク計算はテクノロジの塊と捉えることができるからだ。スマートフォンやタブレットからの利用可否、最新技術の採用有無、ベンチャー企業発の事業正否など、どれも本質的な事柄ではなく表層的な側面であるといえる。
それでは、フィンテックとは何か。ITRでは図のように定義した。現在、このサービス群を巡ってはさまざまな攻守陣営が存在し、多くの新規サービスが生まれては消えている。市場価値が高いプレイヤーのみが生き残る金融サバイバル時代の幕開けを象徴する概念だと捉えるべきだ。
次頁からフィンテックに関する動向や今後の展望を解説するが、金融従事者以外のIT関係者においても参考にしていただきたい。