近代的な都市計画では、創造性、経済合理性、利便性、安全性などを考慮して巨大都市のアーキテクチャを設計していく。企業ITにそのイメージを重ね合わせて、長期的に安定した企業ITのプランニングを目指す企業が出てきている。都市計画の歴史を概観しながらそのポイントを押さえることで、次世代のシステム化構想を担うべき人材を育成するうえでの一助とする。
10年先、あるいはもっと先の15年、20年といった長期スパンで、自社のIT構想を策定しようとする先進的な動きが、国内企業でも出てきている。少し前までは、せいぜい5〜7年先を見据えてプランニングを行うIT部門がほとんどであったが、10年以上先の長期計画に挑む意欲は、1970年から80年代における黎明期のIT部門に立ち戻ったようで興味深い。
都市計画は、Urban Planning、またはUrban and Regional Planning(都市地域計画)として長年研究されてきており、専門の講座を開設する大学も多い。将来の人口増大や交通導線の複雑化を予測しつつ、巨大都市を建造する都市計画のイメージは、長年の負の遺産であるサイロ型、ストーブパイプ型と呼ばれるシステムを多く抱える企業にとって、理想的なメタファーに映るだろう。メタファーとしての都市計画がIT業界で注目されたのは20年ほど前からであり、主にソフトウェアの生産性や再利用性の向上を中心に議論され始めた。
世界が急速に都市化し人口が増大していくにつれ、都市環境や居住問題はますます重要性を増してきている。1976年に第1回国連人間居住会議が開催された際の声明は、こうした課題に対する挑戦として興味深いといえるだろう。その一部を以下に抜粋する。